Basso Continuo's Music Page
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2005年11月19日(土曜日)に、宇都宮市内、 「栃木県総合文化センター」で 「グローリアアンサンブル&クワイアー Vol.13」 という演奏会が催されます。こちらに演奏会案内を掲載しています。 私は毎回この演奏会にチェンバロ・オルガンなどの鍵盤奏者として参加しているのですが…今回採りあげる曲は、バッハ(J.S.Bach)の「マニフィカート(Magnificat)」そして、ラター(John Rutter)の、これまた「マニフィカート(Magnificat)」であります。果たして、無事に演奏会本番を迎えられるのか?以下をご覧ください・・・
ご注意:
1.テキスト量が膨大になってきたので、以下のように分割しました。
昨年のグローリア演奏会終了から既に半年が経過している。
「おい、ことしの『日記』の開始は、何とも遲いではないか」といぶかる向きもあろう。はい、遅いです。すみません。実は今年の私、スロースターターです。これまでの日程は公式サイトのスケジュール表(グローリアカレンダー)を見ていただくことにして…。私がこれまで参加したイベントを書いておきます。
この2つについて簡単に説明しておく。「グローリア」は、団員メンバーが固定していない。毎年新規に団員を募集し、新規に結成するという形態を取っている。従って毎年の活動開始に際して、合唱団は懇親会、オーケストラは合宿を催してメンバーの交流を図るのである。こういう目的であるから、上の行事には当然「酒を飲む宴会」が付いてくる。まとめると、私は今年のグローリアに関しては「酒が入る行動しか起こしていない」ということなのだ。
「お得意の『楽曲分析』は?」という質問されるかたもいるかもしれない。すみません、楽曲分析も全然行っていません。ううむ、ホンマ今年の俺はスタートが遅い。大丈夫か?。
バッハ(J.S.Bach)のマニフィカトには、「Quia fecit mihi magna qui potens est: et sanctum nomen eius」という曲がある。歌詞の意味は、「力あるかた、私に大いなる御業をしてくださったのです。神聖な名を持つかた」といったところだ。
通奏低音鍵盤奏者である私はこの曲に関しては特別の注意を払わなければならない。なぜそんなに入れ込むのか?まず「Quia fecit mihi magna」の全体の樂譜を示そう。
Basso Continuo(通奏低音)パートはチェロ、バス、オルガンで構成されるのだが、オルガンパートの右手は楽譜に指定されていない。オルガンの右手は即興で加えていくのだ。 こうした行為を、通奏低音の「実施(Aussetzung(独),realizaion(英))」という。
もっとも、通奏低音を「実施」しなければならないという点だけなら、この曲はそれほど私の注意を惹くものではない。注目すべきはその「編成」だ。見ると分かるように、バス独唱と通奏低音しか登場しない。さらに、ところどころ、バス独唱が休み、通奏低音が「素っ裸」になる部分が存在する。したがって、オルガンで「実施」する右手の動きがこの音楽で担う役割はとても大きい。しかもこれを即興で行(おこな)うわけだ。楽譜に指定されていないオルガンパートの右手をどう「実施」するか、これには無数の可能性がある。
とはいっても、実際にいきなり即興で行うことは簡単ではない。何よりも不自然な和声進行(和声の規則に反した進行)が発生してはいけないし、「バッハの宗教曲」という音楽の様式を考慮することも大切だ。私は即興能力が優れているとはいえないので、あらかじめ色々な「実施」パターンを作成し、試してみることが必要なのだ。
以下は現在までに試作した「実施」例の一部である。
【実施例1】低音旋律の反復進行を強調した例。
[MIDIファイルはこちらからダウンロードできます(Bach_Quia_fecit_mihi_magna_r1.mid, 12.7KB)]
【実施例2】模続進行を用いてみた例。「実施例1」よりも少し派手気味。
[MIDIファイルはこちらからダウンロードできます(Bach_Quia_fecit_mihi_magna_r2.mid, 13.2KB)]
【実施例3】一風変わった、なんだかぶっ飛んでいる例(爆)。こんな実施例はバッハに対する冒涜かも?そこまでいかなくとも、演奏会に使用することは到底認め難いということは間違いないようだ。ただし、他の「実施」と同様、ここでも"continuo"と独唱バスの音符は一切変えず、原曲そのままだ。個人的にはこのパターンが一番やってみたかったりする(笑)。(^^;)
[MIDIファイルはこちらからダウンロードできます(Bach_Quia_fecit_mihi_magna_r3.mid, 13.7KB)]
まあ、【実施例3】は論外としても、このほかにも「実施」の可能性は無数に考えられる。何しろ本来は即興演奏される内容なのだ。より優れた「実施」を即興的に実現するための模索は、演奏會本番まで続くだろう。
第1回の合同練習は6月19日に行われていたが、私は都合で参加できなかった。このため、私にとっては本日が最初の合同練習だ。とにかく暑い。脳みそが沸騰しそうだ。高温、高湿度は我が脳細胞の活動を停滯させ、甚だ好ましくない、と見ると指揮者の1人である我らがうっちい先生はハーフパンツ姿で登場。畜生、俺もそうすりゃよかったぜ(^^;)
練習の第1曲目はバッハ(J.S.Bach)のマニフィカート(Magnificat)。この曲はとにかくたくさんのメリスマを含む。16分音符が錯綜する音型が多いのだ。
例えば11曲目の"Fecit potentiam"(力を行使し)。この曲全体は壮大なフーガの呈示部だ。主題(Subject)と対旋律(Counterpoint)は以下のようである。
フーガ主題は殺人的なメリスマ(melisma)の連続であり、最初に主題を提示するテノールパートを含め、合唱は「修羅場」(^_^;)を経験する。
ただし修羅場は合唱だけではない、フーガ展開が頂点に達すると、主題を演奏するのはトランペットとフルートだ。特にトランペットはこの部分はとても難しい。トランペットは「修羅場経験」を合唱と共有しているのだ(^^;)。
主題と対旋律からなる輝かしい連星系を種々の衛星が取り囲んでいる。通奏低音は「その腕による力(potentiam in brachio suo)」を見せつける鼓動を刻み、
他の楽器や合唱のパートは「力を行使する(fecit potentiam)」を象徴するファンファーレを鳴らす。
バッハの「音楽で歌詞内容を表現する」という技術は健在だ。うっちい先生の「Fecit in potentiamの分散和音は一音一音をはっきりと」という指示は非常に納得のいく物だ。
・・・等々幾分ハッタリをかましつつ書き散らしているが、何故私がここまでハッタリをかますことができるのか?バッハの音楽は私のなかでは「自称、得意技」なのだ。さらに實は私はこの曲を10年ほど前に一度經驗しているのである。単につぶしをきかせているだけだと言うことを強調しなければならない。
その証拠に、K先生が指揮をするラター(或いはラッター,John Rutter)のマニフィカト(Magnificat)は玉砕だ。とりあえず、現段階で、この曲に関しては「リズム」「ビート感」「テンポ」が課題だが、私はまだまだこの課題をクリアできていない。ラターの楽譜は複雑でとにかく楽譜を凝視、その結果、K先生の指揮棒が見えないという状況のようだ。私だけではなく、他にもそのような状態の人が多くいるように感じる。要するにラターについては、譜読みがまだまだ不足しているのである。ゴールは遠い(+_+;)