私の趣味はクラシック音楽ですが、 郡上踊りのお囃子である 「郡上節」 は、 音楽的に見ても色々面白い題材です。 ここではそれのいくつかをとりあげてみます。
(なお、以下の譜面はすべて私が採譜したものです。 長年踊りに親しんできた私にはこう聞こえますが、 もとより日本の民謡を五線譜で表現するのは限界があります。 まあ、 およその目安と思ってください(^^;))
これらを見ると、
よーするに郡上節は民謡としてはかなり複雑
・
立体的な構成を持っているっちゅーことですね(^-^)
エッヘン!
以下の2つの譜面をご覧ください。 上の段は郡上節「かわさき」の間奏、 下の段は郡上節「三百」の間奏です。 いずれも三味線を主体に横笛が加わっている旋律です。
両方の旋律は全く同じと言っても良いほどです。 郡上踊りでは「三百」は必ず「かわさき」の次に登場しますが、 この同一の間奏によって両者は不思議な結びつきを持っています。
大抵の日本の民謡では、 伴奏楽器はおおよそ歌と同じ動き、 すなわち、 ユニゾンかそれに近い動きをしています。 「郡上節」の多くの曲も例外ではありません。 ところが「春駒」にはこれの興味深い例外が見られます。 歌の2拍子系に対して、 三味線伴奏が3拍子で固執旋律 (オスティナート) で進行するところがあるのです。
この譜面では、 上段が歌の動き、 下段が三味線の伴奏の動きを示してます。 角括弧で示すように、 間奏の後半から、 歌が入ってきてからしばらくの間にわたって、 伴奏は完全に3拍子パターンの繰り返しになります。 歌の動きや、 太鼓などのリズム、 踊りの動きは2拍子系なんですが、 三味線の伴奏は半分以上がこの3拍子パターンで占められています。 「歌の旋律に対する伴奏の完全に独立した進行」 「複合拍子」 ・・・西洋音楽の「対位法」を思わせる動き方です。
2.では 「春駒」 の伴奏に部分的に3拍子が存在することを示しましたが、 「まつさか」 の伴奏の 「拍子木」 のリズムは、 次に示すようにの3小節リズム、 あるいは非常にゆったりした3拍子になっていいます。 踊りの動きもこの拍子木同様、 3小節1サイクルです。 一方、 この拍子木にのって歌われる歌は かなり自由なリズムになっており、 拍子感はあまりはっきりしません。 このため、 「3拍子」の感覚はあまり曲の表面には出てきていません。 しかしこれは紛れもなく3拍子の曲です。
実は日本の民謡では 「3拍子」 というのは比較的珍しいのです。 (「五木の子守歌」は数少ない有名な例です) 3拍子はむしろお隣の朝鮮半島に広く分布しています。 そういう意味で、 郡上節が 「春駒」 「まつさか」 において、 3拍子の要素を持っているのは、 大変興味深いと思います。