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ベートーヴェン(L van. Beethoven)は 晩年になって2つの大きなフーガを残しています。 1つは第29番ピアノソナタ (作品106「ハンマークラヴィーア」) の終楽章であり、 ピアノを弾かれる方なら 聴いたことのある人も多いと思います。 もう1つが、 今回ここで採り上げる、 弦楽四重奏曲作品133「大フーガ」(Grosse Fuge)です。 この後の解説を読まずに すぐにMIDIを聴きたいというかたは こちらへどうぞ。
この、 弦楽四重奏曲「大フーガ」は、 最初、 弦楽四重奏曲13番(作品130)の終曲として作曲されました。 しかし、 この終曲に関しての 「長すぎる」 「理解しにくい」 という友人の忠告を受け入れ、 これを独立した 「弦楽四重奏曲作品133『大フーガ』」とし、 作品130のためには新たな終楽章を 作曲したのです。 しかし、 最近の演奏や音源では、 ベートーヴェンの 最初の意思を尊重してか、 「大フーガ」を作品130の 終曲として演奏することも 行われるようになってきています。
ご存知のように 「フーガ」 とは通常、 作曲家の全くの 抽象的思惟の産物です。 それ故 「フーガ」 に接しようとする人は、 まずその構成 --主題、 対旋律はどれか、 ストレットがあるか等-- に目を向けなければなりません。
更にこの作品 「大フーガ」 は極めて長く (演奏時間は約15分) その構造は 複雑を極めます。 主題は 4つの形態で呈示され、 それぞれの形態の主題が それぞれのフーガ的展開部を形成しているのです。 こんな具合に、 この曲は決して 「聴き易い」 曲ではありません。 しかし、 その構造が 理解できれば、 この曲の持つ 「味」 というものが把握できるかも知れません。 これから私は この曲の構造を記してみたいと思います。 「お?また『大解剖』シリーズか?」 と思われるかも知れませんが、 そこまで大規模な物ではなく、 単なる 「道しるべ」 ぐらいに考えてください。 しかしこの 「道しるべ」 がこの曲に近づく助けになれば幸いです。
多くの他のフーガと同様、 この曲のフーガ主題は「1つ」です。 しかしこの曲では その主題は4つのタイプ(形態)で現れ、 それぞれのタイプの主題が それぞれフーガ的展開を行う部分を 構成しています。
タイプ1の主題は以下の通りです。
この主題は多くの 導音的進行(Motion of "leading note")を持ち、 また、 導音的進行の間が 跳躍進行(disjunctive motion)で結ばれているのが 特徴です。 タイプ1の主題は主題の基本形であり、 全楽器のユニゾンで この主題を演奏することから この曲は開始されます。
タイプ2の主題は 以下の通りです。 タイプ1の主題が 呈示された直後に 引き続いて呈示されます。
タイプ2の主題は タイプ1の主題の リズムを変化させた物です。
タイプ2の主題の呈示の後、 タイプ3の主題が 「予告的呈示(prediction)」 されます。 「予告的呈示」と言う言葉を使う理由は、 その旋律構造が 微妙にタイプ1, 2の主題と異なっているからです。 真のタイプ3の呈示(Exposition)は、 予告的呈示が終了してから、 チェロのパートで行われます。 タイプ3の主題旋律は、 タイプ1・2と同じで、 ただ音符が四分音符になっているだけです。 このとき、 他の楽器は対旋律(counterpoint)を演奏しています。 この対旋律は後の発展の際にも用いられます。
タイプ3の主題が呈示された後、 フーガ開始の直前に ヴァイオリンによって演奏されます。 タイプ4の主題の音の並びはタイプ1と 同じですが、 各音が休符で分けられているのが 特徴です。
各タイプの主題はそれぞれ展開部を構成しています。 ここではその展開部の構成を記してみます。 括弧()の中の数字は MIDI演奏における経過時間を示しています。 又、 引用した譜例の最初の小節にある数字は、 小節番号です。
この「序」は、 主題のそれぞれのタイプの呈示部にあたります。 タイプ1, 2の主題が立て続けに 全楽器のユニゾンで演奏された後、 タイプ3の主題に入ります。 先ほど説明したとおり、 タイプ3の主題は 和音を伴って 第1ヴァイオリンで予告的呈示された後、 チェロに呈示されます。 このとき主題は対旋律を伴っています。 タイプ4の主題は、 第1ヴァイオリンのソロによって ピアニシモで呈示されます。
第1ヴァイオリンのピアニシモで タイプ4の主題が呈示された直後から フーガの展開部に入ります。 (楽譜上では、 第1ヴァイオリンのピアニシモで タイプ4の主題が呈示された直後に "FUGA" と書かれています。) この第1展開部では タイプ4の主題(Theme (Type4))が 呈示・展開されます。 主題には常に特徴的な 対主題(counter-subject)が対位しています。
第1展開部ではこの2つの旋律 -主題(タイプ4)と「対主題」- が主に展開されます。 上の楽譜で、 ヴィオラパートは主題のタイプ4です。 一方、 ヴァイオリンパートに現れている 対位旋律 (今仮にこう呼ぶ) もまた重要な素材であり、 後々の展開部でも活用されます。 それ故 この特徴的な対位旋律を 「対主題(counter-subject)」と称して、 他の対位的素材と区別することにします。 第1展開部での主題及び対主題の展開の途中で、 新たな対位が出現しますが、 この「対主題」 ほどの重要な意味は持ちません。
ここは主題タイプ3の展開部です。 ここでもまた特徴的な 対旋律(counterpoint)が現れます。 この対旋律の由来は、 「Overture(序)」で タイプ3の 主題がチェロに呈示されたときに 他の楽器に現れていた音型です。
タイプ3の主題(Theme(type 3))と対旋律(counterpoint)、 この2つがこの展開部での主要な素材です。 主題が演奏されるときには常に 対旋律が対位しています。 一方、 対旋律は主題無しで出現、 展開することもあります。
この展開部は長く、 構造も複雑です。 展開部の開始ではまず タイプ2の主題(type 2 theme)が 呈示・展開されます。 主題には簡単な対位が付いてます。 (下掲の楽譜では赤い音符が 主題タイプ2の動きを示しています。 その他の音符を 対位と考えてもらえばよいと思います。)
タイプ2の主題がしばらく展開された後、 調が B-dur(変ロ長調)から As-dur(変イ長調)に突然転調(08:22.08)し、 新たな部分が始まります。 タイプ1の主題(theme(type 1))がチェロに呈示され、 第2ヴァイオリンに新たな 対位(counterpoint)が呈示されます。 この新たな対位は タイプ2の主題の反行形に由来する物です。
この組み合わせはまず最初、 フーガの正則的な順序 (主題(Dux)-応答(Comes)-主題(Dux)-応答(Comes)) によって各声部に呈示されますが、 その後、 主題も対旋律も次第にその形を崩していきます (08:54.28以降)。
やがて、 8分音符から成る新たな対位(counterpoint) が導入され、 変形(縮小)された主題(Theme(modified))と 組み合わせられます(09:32.09~)。
この後、 第1ヴァイオリンによって 主題がほぼ完全に再現(9:50.12~9:58.18)され、 その後は主にトリルの動きが発展し、 一旦、 Es-dur(変ホ長調)で完全終止します(10:29.27)。
ここから主題の展開は また新たな段階に移ります。 極端に変形された主題(Extremely modified theme)が またまた新たな対位(Counterpoint) と共に 呈示されます(10:32.02~)。 この新しい対位は、 第1展開部の対主題に由来する (coming from the counter-subject in the 1st development) 物です。
この組み合わせは、 フーガの正則的な順序 (主題(Dux)-応答(Comes)-主題(Dux)-応答(Comes)) で これまた各声部に呈示され、 更に発展させられていきます。 この後は 第1展開部の対主題の素材の発展がメインになっていきます。
これは 第2展開部の素材の短縮された再現です。 しかし、 楽譜を見るとわかるように、 第1展開部の対主題の素材も 取り扱われています。
上の楽譜で、 第1ヴァイオリンとヴィオラはタイプ3の主題を 展開しており、 また、 第2ヴァイオリンは第2展開部で現れた 対旋律の素材を展開しています。 しかし、 チェロに現れているのは、 第1展開部で出現した対主題の素材 (material of the counter-subject in the 1st development) なのです。この展開部の最初は第3展開部と全く同じ、 即ちタイプ2の主題が呈示、 展開されます。 しかし、 その後の音楽(13:14.13以降)は 次第に自由な間奏的な物になっていきます。 この間奏部分では半音階的な動きや、 ピチカートによる主題の断片の呈示(13:44:04~)などが 目立っています。
終止部ではまず、 第1展開部、 及び第2展開部の形が短く回想された後、 丁度この曲の冒頭と同じような雰囲気で、 タイプ1の主題が、 わずかに引き延ばされた形で 全楽器のユニゾンで演奏されます。 その後タイプ2の主題が一瞬姿を見せた後、 トリルの形が若干繰り返され、 そして、 最後の部分(15:47.28~)に入ります。 ここでは 第2ヴァイオリンとチェロにて 主題(Theme)が演奏され、 第1ヴァイオリンが 第1展開部の 対主題 (Counter-subject) で対位します。
最後には8分音符の動きと 対主題の動きがメインになり、 この長いフーガを終了します。
文献:諸井三郎著「ベートーヴェン弦楽四重奏曲 作曲学的研究」1965, 音楽之友社
文献:「ベートーベン弦楽四重奏曲集第6巻」1994, 全音楽譜出版社
文中の楽譜は「MusicTime Deluxe for Windows 3.1 and 95」((C) 1996 Passport Designs Inc.)にて作成したのをビットマップ化した物です。
Roland SC-88Pro. GSならおそらくOKでしょう。
全てRoland SC-55 mapです。
Track | Channel | Bank | Patch |
1 | 1 | SC-55 Map Capital Tones | Violin |
2 | 2 | SC-55 Map Capital Tones | Violin |
3 | 3 | SC-55 Map Capital Tones | Viola |
4 | 4 | SC-55 Map Capital Tones | Cello |
5 | 5 | SC-55 Map Capital Tones | Pizzicatostr |
6 | 6 | SC-55 Map Capital Tones | Pizzicatostr |
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