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ピアノの恩師との再会

今年(2000年)のゴールデンウィーク、 私は実家に帰省していました。 前から決めていたことがあったのです。 それは 「私がかつてレッスンを受けていた ピアノの先生と再会する」 ということでした。 今回はこの話をちょっとしてみようと思います。

そもそもの発端は 今年の2月頃にさかのぼります。 ネットサーフィンをしていたら、 ある音楽大学の名前が目に留まりました。 見覚えのある音楽大学の名前、 それは、 かつて私がピアノのレッスンを受けた 先生の勤めておられる音楽大学でした。

「そういえば、 俺がずっと昔レッスンを受けていたピアノの先生は、 確かこの大学の教授か 助教授ではなかったか・・・」

私がレッスンを受けたピアノの先生は、 この音楽大学の作曲科の 教鞭をとられているのです。

思えば私が小学校2年から大学生に至るまで、 この先生には大変お世話になったのでした。 「ソナタ形式」 「フーガ」 「和声学」 など、 現在の私の音楽の興味の 中心の大部分は、 この先生とのレッスンを通じて 得た物でした。 前2者については、 先生のご自宅にあった 「楽式論」(石桁真礼生 著)でその概要をつかんだものですし、 「和声学」については、 実際に先生にピアノと同様に 「レッスン」 を受け、 ひととおりの古典和声の基礎的な部分を 習得することが出来たのです。

このように、 現在、私にとって「音楽」 --単にピアノだけではなく、 それ以外、 作曲的な方面についても-- が、 自分の生活を潤す重要な要素になっていることは、 この先生のレッスンがなければ 到底考えられなかったでしょう。

「ずっと逢っていないが、 お元気だろうか」

これが気になりだすと もうどうしようもありません(笑)。 私は先生の電話番号を照会し、 早速電話をかけました。

15年ぶりに聞く電話口の先生の声は昔のままでした。 かつて私が、 ピアノのレッスンの順番待ちの間に「楽式論」 を読みふけっていたこと、 発表会で色々自作自演 させていただいたことなどを 懐かしそうに話されました。

電話口を挟んでわずか10数分のお話でしたが、 長い間 「音信不通」 であったピアノの先生と 再びコンタクトが取れたことは、 私にとってこの上なく有意義なことでした、 と同時に、

「これは一度先生のご自宅へご挨拶に伺わなければ」

という考えがむくむくとわき上がってきました。

その機会は比較的早くやってきました。 私の職場は4月末から5月頭にかけていわゆる 「ゴールデンウィーク」 で長い休みに入ります。 実家へ帰省中の4月30日、 私は再び先生の ご自宅へ電話をかけました。 そして、 5月4日に先生の ご自宅へお邪魔することを 約束したのでした。

5月4日の午後2時すぎ、 お菓子の手みやげと、 自作曲(ヘンデルの主題による変奏曲)の 楽譜とテープを持って 私は先生のご自宅へお邪魔しました。 先生のご自宅は、 私がかつてレッスンを受けていたときと 全く同じ場所です。 驚いたことに、 10年以上経過しているというのに 先生の容姿も 全く昔のままでした。

私は早速、 自作曲の楽譜とテープを先生に差し出しました。 楽譜を手に取られた先生は、

「ほおお、 すごいねぇ、 きれいな楽譜だね~ (←ノーテーションソフトで プリントアウトしたからきれいなのです(^^;)) どれ、 早速聴いてみようか」

テープを傍らのコンポにセットし、 私の自作曲が流れ始めました。 先生は真剣な表情で楽譜を見つめる ・・・ 緊張しました。 何だか昔、 和声学のレッスンを 受けていたときのような心境です(^^;)。

「ほお、 音の動きとか、 ちゃんとしとるがね。 何も知らん人が作ると、 なんかこう、 しっくり来んところがあるんだけど、 これはそんなことはない」

「はい、 先生から以前教わっていた『和声』の本 (注: 芸大の和声学の教科書)を、 あれからひととおり3巻まで 斜め読みしまして・・・」

「ほお、 3巻読んだかね。すっごいねぇ」

なんだか先生「ほお、 すっごいねぇ」の連発であります(笑)。 最終変奏のフーガも 「しっかり作られている」 との言葉をいただきました。 まあ、 先生の耳にはそれほど 変な曲であるとは 聞こえなかったようです。 ヨカッタ(^o^)。

お返し(?) というわけなのでしょうか、 先生の最新作品を お聞きする機会にも恵まれました。 かつての先生の作品は 「『無調性』で、 現代的な和音を使用しつつも、 古典的な構成を持っている」 のが特徴で、 その意味では古典指向の 私にも聞き易い作品でした。 その傾向は 今も変わっておられませんでした。

「君も、 今度は、 こういう無調の曲にも挑戦してみると良いと思うよ」 (・・・はあ、 そうおっしゃられても、 無調って どうアプローチしたらよいのか 分かりません~~^^:)

それからあとは色々な音楽談義。

「君にとって音楽が、 これほどまでに趣味として生かされることは、 私がもっとも理想としているところだ」

という先生の言葉がとても耳に残りました。 これ以外にも、 趣味で音楽を続けている 私のことをとても 好意的に 評価してくださっているのが、 話の節々から伝わってきました。 私にとってとても嬉しいことですが、 先生にとっても、 私のような音楽ファンを作り出せたことは、 プロの音楽家を育てるのとは また別の意味で喜びなのかも知れない、 と感じました。

午後5時前、 先生と別れて私は実家に戻りました。 帰路途中、 先生と再びこうして再会することが出来た 喜びをかみしめていました。 先生からいただいた言葉はこれからの 音楽生活の中でとても励みになるでしょう。 自分の出来る範囲で 最大限音楽生活を楽しむことが、 先生から受けた財産の 継承になるような気がしています。

※ちなみに我がピアノの恩師のお名前をここで暴露致します。「小桜秀爾」先生です。

(2000.May.10)

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