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「音色」に関する数学的ハッタリ的考察-実践編-

私は以前、『「音色」に関する数学的ハッタリ的考察-準備編-』という記事を掲載しました。準備が完了したのでいよいよ実践を行わなければなりませんが、2年以上もほったらかしとは私もずいぶん「怠け者」になった物です。「怠け者」というよりも「嫌がらせ」という話もあります。とにかくたいへん長らくお待たせいたしました。それではいよいよ周波数スペクトルを用いて実際の音楽を調べてみようと思います。

1. 弦楽四重奏編

最初のネタは「弦楽四重奏」です。ご存じのように、弦楽四重奏は、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという4本の弦楽器で構成される室内楽です。 「ヴァイオリン属」という同質な4本の樂器から得られる均質な響きは、ア・カペラ合唱(無伴奏合唱)に匹敵する純粋性を備えています。 楽曲を編成するときの基本である「四声体」を使用していることも、ア・カペラ混声合唱と比較することができます。それ故、弦楽四重奏は古来「室内楽の王者」と呼ばれてきました。

弦樂四重奏の(そしてついでに混声合唱も)各パートの音域を確認しておきましょう。(これは大体の目安で、点線の付いた部分は若干変動があります)

[The ranges of parts in string quartet and mixed chorus in four parts (SQ_range.gif,3.27KB)]

左側が弦樂四重奏(string quartet)の音域。右側が混声合唱(mixed chorus)の各パートの音域を示しています。弦樂四重奏の各パートは、混声合唱よりも遙かに広い音域を持っていますが、両者とも(当然ながら)楽譜の上の方のパートほど高い音が出ます。

さて、混声合唱において、下の方のパートが上の方のパートよりも高い音を連続的に出す、ということは滅多にありません。 高い音はソプラノ専門であり、中ぐらいの音はアルトやテノールの範囲であり、低い音はベースの得意技であることを考えると、これは当たり前のように思われます。

ところが弦樂四重奏ではそうではないのです。特に「チェロがヴィオラより高い音を出す」という状況が頻発します。 例として、ベートーヴェン(L.van Beethoven)作曲の弦楽四重奏曲第7番Op.59-1「ラズモフスキー(Razumovsky」第3樂章冒頭を取り上げます。

[Beethoven's String Quartet No.7, The 3rd movement(1) (BSQ7_3_1.gif,10.0KB)] [Beethoven's String Quartet No.7, The 3rd movement(2) (BSQ7_3_2.gif,11.4KB)] [Beethoven's String Quartet No.7, The 3rd movement(3) (BSQ7_3_3.gif,10.8KB)] [Beethoven's String Quartet No.7, The 3rd movement(4) (BSQ7_3_4.gif,9.41KB)]

最初第1ヴァイオリンに提示された主題旋律は、9小節目から、チェロによって一オクターブ下で繰り返されます。 このチェロは比較的高い音域で旋律を担当し、この間、低音はヴィオラが担当するのです。 すなわち、約8小節にわたってヴィオラとチェロの音域が逆転しています。 このような、「チェロが主旋律を奏で、ヴィオラが低音線を担当する」ということは、弦樂四重奏では大変頻繁に見られます。 どうしてこのような書法が見られるのでしょうか。

そこで「準備編」で紹介した「周波数スペクトル」の登場です。 ヴィオラとチェロの同じ高さの音-a0音(周波数220Hz)-の周波数スペクトルを比較してみましょう。なお、下のグラフで、横軸の数字は倍音の次数を示し、縦軸は各々の基音・倍音の強さ(純音波形の振幅)を示しています。

[Viola a0 Spectrum(Viola_a0.gif, 3.14KB)] [Cello a0 Spectrum(Violoncello_a0.gif, 2.33KB)]

ヴィオラa0音の周波数スペクトル(Sound Spectrum of Viola a0)とチェロa0音の周波数スペクトル(Sound Spectrum of Violoncello a0)の比較

一見してわかるのが、ヴィオラの周波数スペクトルは倍音成分を多く含む(※脚注1)ということです。

実は、倍音成分が増えると、音色はより鋭い、あるいは堅い音色、場合によっては幾分濁った感じのする音色になります。(※脚注2) 上の楽譜の問題の箇所、ヴィオラはかなり堅い、鋭い音の筈です。実際、ヴィオラのこの音域の音色は、他のヴァイオリン属の樂器とひと味違う、独特の音色です。 この音色で演奏された低音線は明瞭に響き、曲の和声的な輪郭を安定させるでしょう。

他方、チェロの音色は、「より柔らかく、歌う旋律に適したスペクトル」ということができるでしょう。 さらに、この音域のチェロの周波数スペクトルは、一オクターブ上の音のヴァイオリンの周波数スペクトル(下掲)と幾分似た構造を持っています。

[Violin a1 Spectrum(Violin_a1.gif, 2.29KB)]

周波数スペクトルが似ているということは、音色も似ている、ということです。 「ヴァイオリンで提示された主題を1オクターブ下で反復する」という事を考えた場合、「音色・表現の統一感」という意味ではヴィオラよりもチェロの方が適している、ということも考えられたかもしれません。

弦樂四重奏は、「ヴァイオリン属の4つの樂器の均質な音色」とよく言われますが、実はパート毎ににそれぞれ個性的な音色を持っています。特にヴィオラとチェロの音色は対照的な側面があります。こうした、「似ているけれども微妙に違う音色」をどう組み合わせるかというのは、弦樂四重奏を楽しむ際の1つのポイントです。 むろん、ベートーヴェン等の大作曲家が周波数解析技術に精通していたとは思えませんが(アタリマエダ)、彼らはこうした音色の類似点や相違点を直感的に把握して自作に生かしていたのでしょう。 私が行った周波数解析は、大作曲家の室内楽作法に対して数学的な裏付けを与える1つの例だと思います。

2. ピアノ編 - 1

このサイトは、ピアノのサイトということになっていますので(何を今更(爆))ピアノ音楽、ピアノ演奏についても音色スペクトルを用いて考察してみようと思います。特にここで考えてみたいのは、

「ピアノで他の樂器の音色を模倣できるか」

ということです。

で、結論から言うと、これはやはり結構厳しい話なのです。 特に、管楽器や、ヴァイオリンなどの擦弦楽器(弦をこすって音を出す楽器)の音色をピアノで模倣するのはかなり困難です。 それは、周波数スペクトルに由来する問題ではなく、ピアノの出す音は「打弦音(弦を叩いて出す音)」であるという理由によります。

ピアノの鍵盤を押さえた瞬間から約1.9秒間の音波のグラフを示してみます。

[Sound of Piano (DampingOscillation.gif, 1.64KB)]

上のグラフが示すように、鍵盤を押下した瞬間に音が立ち上がり、それ以降、音の強さは次第に減衰していきます。こうした
「最初の一瞬で音が立ち上がり、後は次第に減衰していく」(「減衰振動」(damping oscillation)といいます)
という特徴
は(※脚注3)、ピアノのような「打弦樂器」、あるいは「撥弦楽器」(弦をはじいて音を出す樂器。ギター、ハープ、琴など)、さらには「一般的な打楽器」から発せられる音に共通してみられる特徴で、 擦弦楽器(弦をこすって音を出す樂器)や管楽器のように、音の強さを一定に保つことが出来る樂器から発せられる音のものは本質的に異なっています。

実はピアノの場合、周波数スペクトルよりもこの「打弦音」のほうが音色の特徴の多くの部分を占めているようです。 その証拠に、ヴァイオリンのような擦弦楽器(弦をこすって音を出す樂器)でも「ピチカート(pizzicato, pizz.)」を使用して「撥弦音」(弦をはじく音)を出すと、ピアノとよく融合します。ピアノの打弦音も、ピチカートの撥弦音も、両方とも減衰振動の音だからです。

[Beethoven's Piano Trio Op.97, The 2nd movement(1) (BPfT_7_2_1.gif,8.88KB)] [Beethoven's Piano Trio Op.97, The 2nd movement(2) (BPfT_7_2_1.gif,10.0KB)]

ベートーヴェン(L.van Beethoven):ピアノ三重奏曲Op.97「大公」第2楽章

上の楽曲ではこれが效果的に用いられています。最初、ピアノのソロから始まり、途中から弦樂器(ヴァイオリンとチェロ)のピチカートが入ってくるのですが、これが見事にピアノの音と融合しています。音型も直前のピアノの左手をそのまま引き継いでいるため、この部分をぼんやり聞いていると、弦楽器のピチカートは、まるでピアノの左手(低音部)のように聞こえます。

他方、打楽器の場合、ピアノでその音色を模倣するのは比較的簡単です。たとえば、鐘(chime)。これをピアノで模倣することを考えてみます。まず、鐘(chime)の周波数スペクトルを示します。

[Chime a1 Spectrum(Chime_a1-1.gif, 3.24KB)]

基音(No.=1)のスペクトルは必ずしも大きくなく、第2倍音以降が大きい。また、基音附近も簡単なスペクトルではありません。何だかごちゃごちゃしてますね。これは特徴的です。基音附近を拡大してみたのが以下のグラフです。

[Chime a1 Spectrum(Chime_a1-2.gif, 4.15KB)]

基音と整数倍の関係ではない色々な周波数のスペクトルが分布しています。特に目立つのが基音の約2/3,6/5,4/3という周波数の成分です。これは基音に対してそれぞれ完全5度下、短3度上、完全4度上の音です。鐘(chime)では、基音附近、一オクターブあたりの範囲にこうした音が密集して居るんですね。

これが分かれば「鐘の音」っぽい音をピアノで再現できます。要するに狙った音と同時に完全5度下、短3度上の音などを鳴らしてやればよい。ついでに、第2倍音に相当する「1オクターブ上の音」もつけてみましょう。

[Simulation of chime on pianoforte (Pf_chime.gif,2.71KB)]

上がその一例です。ウェストミンスター寺院の鐘の音。あるいは始業終業のチャイムです。是非ピアノでお試しください。なかなかそれっぽい雰囲気になってます(^-^)。

というわけでピアノで鐘の音を真似することに一応成功いたしました。ポイントは音色スペクトルと同じような配列になるように、複数の音を並べるという点です。「打弦音」という制約はありますが、色々な音がピアノで実現できそうではありませんか!

この「発明」で私は特許を申請できると良いのですが、残念ながらそうはいきません。こうした実験はすでに多数行われており、芸術作品もたくさん存在するからです・・・と、ここまで来て「ドビュッシー」(Claude Debussy)を連想したあなたは鋭い。そう、ドビュッシーの作品には、こうした手法を用いて作られた作品がとても多いですよね。「La Cathédrale engloutie」(沈める寺)なんてのはその代表作です。

[Debussy "La Cathédrale engloutie" (Debussy1.gif,8.74KB)] [Debussy "La Cathédrale engloutie" (Debussy2.gif,6.32KB)]

この曲で用いられている和音は私が先ほど示した「始業終業のチャイム」と基本的に同じ発想に基づいています。すなわち、「様々な音を周波数スペクトルを構成するように配置して新しい音色を作り出す」という点です(※脚注4)。ドビュッシーは、「周波数スペクトルを構成するように音を配置し、音色を合成する」という考えかたをピアノ曲に意識的に、かつ、大規模に導入した最初の作曲家かも知れません。

2. ピアノ編 - 2

先ほど説明したとおり、弦楽器の音をピアノで模倣することは非常に難しいことです。しかし弦楽器とピアノを組み合わせた楽曲は無数に存在します。こうした曲はどのような書式を用いているのでしょうか?

非常によく見られるパターンは、以下に示すように、弦楽器が息の長い旋律を担当し、ピアノが細かい動きを担当するというパターンです。

[Schumann, Piano Quartet Op.47, finale (Schumann_Pf4.gif,16.9KB)]

シューマン(Robert Schumann):ピアノ四重奏曲 Op.97, 第4楽章

こうした書式はピアノ伴奏付きの声楽曲によく見られる物です。

[Mendelssohn, Op.34-2, "Auf Flügeln des Gesanges" (Auf_Flugeln.gif,10.2KB)]

メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn):「歌のつばさに(Auf Flügeln des Gesanges)」

上に示した楽譜では、人の声の音色とピアノの音色の対照性を利用して効果を上げています。弦楽器が発する音と声楽とは類似する点があり、従って、「ピアノ+弦楽器」の組み合わせが、ピアノ伴奏付き声楽曲と似た書式になるのは、当然あり得ることです。

しかし、「ピアノ+弦楽器」の室内楽で、ピアノと弦楽器は常に異なった役割を担っているというわけではありません。むしろ、ピアノと弦楽器が同一の主題旋律や素材を演奏するということも珍しくありません。主題が発展する過程で、主題素材を取り扱う楽器が交代するのは当たり前のことですし、「提示部では弦楽器で演奏された主題が、再現部ではピアノで演奏される」という場合は甚だよく見られます。

ここでやはり問題になるのが、弦楽器の音とピアノの音の本質的な違いです。同一の主題旋律であっても、弦楽器で演奏するときとピアノで演奏するときでは音色が著しく異なるため、和音の付け方や配置の仕方に関しては色々な工夫が必要になることが多いのです。そうした中で、「弦楽器の音をピアノで模倣する」ことを意図したのではないか?という興味深い例を見つけたので、紹介したいと思います。ネタはブラームス(Johannes Brahms)のピアノ4重奏曲第3番、第3楽章です。

[Brahms, Piano Quintet Op60, the 3rd movement (Brahms_Pf4_3_3_1.gif,13.9KB)] [Brahms, Piano Quintet Op60, the 3rd movement; (Brahms_Pf4_3_3_2.gif,14.4KB)]

この曲は、チェロが奏でる主題旋律で開始されます。ピアノ伴奏を伴いながらチェロA線を中心にして奏でられる旋律は非常に魅力的です。

ところがブラームスは再現部でこの旋律をピアノで登場させました。「単旋律を歌う」という点ではピアノは到底チェロにはかないません。ここでブラームスが採用した手法は十分に検討する価値があります。

[Brahms, Piano Quintet Op60, the 3rd movement (Brahms_Pf4_3_3_3.gif,14.2KB)] [Brahms, Piano Quintet Op60, the 3rd movement; (Brahms_Pf4_3_3_4.gif,13.9KB)]

ピアノが主旋律を演奏するので、伴奏は弦楽器が中心になります。ここで弦楽器はピチカートを導入し、ピアノの打弦音とバランスを取ります。そしてピアノを見ると、旋律開始部分は2オクターブ上で重複されている。この「2オクターブ重複」がポイントなのです。この旋律附近、a0音のチェロとピアノの周波数スペクトルを比較してみましょう。

[Pianoforte a0 Spectrum(Pianoforte_a0.gif, 2.95KB)] [Cello a0 Spectrum(Violoncello_a0.gif, 2.33KB)]

ピアノa0音の周波数スペクトル(Sound Spectrum of Pianoforte a0)とチェロa0音の周波数スペクトル(Sound Spectrum of Violoncello a0)の比較

ピアノの周波数スペクトルはチェロと比べて非常に倍音成分が少ない。そこで、ピアノの音色をチェロの豊かな音色に近づけるためにはどうすべきか?

そう、倍音成分を補強するのです。ブラームスはそれを実行した。具体的には、旋律をオクターブ重複するという方法です。オクターブ上の音や2オクターブ上の音は、左手が演奏する音の倍音として機能し、ピアノ本来の音よりもより豊かな響きを持つ音を作り出します。これはピアノの音をチェロの音に接近させようとした一つの試み、と見なすことができるでしょう。むろんその手法は後の時代のドビュッシーほど積極的ではないし、ブラームスが周波数解析を知っていたとは思えません。しかし、「和音によって音色を合成する」という意図はドビュッシーの曲と通じる要素があります。私が数学的な道具を贅沢に駆使して編み出した結論を、大作曲家は直感と経験で行っていたということです。いや、こういう直感が働くところが大作曲家なのでしょう(^^;)

そして、こうした考察は演奏する時にも1つの示唆を与えます。上の例では、ピアノがオクターブで演奏する旋律に関して、主要線は左手側であり、右手は倍音である、ということです。すなわち、右手が演奏している音は、左手が演奏する旋律の音色を豊かにする役割を担っている、ということです。右手と左手の音量バランスを変えることで、ピアノから発生する音色をいろいろ変化させることができます。変化のさせかたには無数の可能性がある。従って、この部分を演奏するときには左右の音量バランスには細心の注意を払う必要があるはずです。この場合に限らず、和音を構成する1つ1つの音に関して、そのバランスを考慮することはとても大切なことですが、これは結局「周波数スペクトルをコントロールする」=「音色をコントロールする」ということに通じるのだと思います。



※脚注1:ヴィオラの音がこのように倍音を多く含む最大の理由はヴィオラの「大きさ」にあると思います。ヴィオラはヴァイオリンの完全5度下の音を出す樂器ですが、 本来、ヴァイオリンの完全5度下の音を出すための理想的な樂器の大きさは、ヴァイオリンの1.5倍なのです(完全五度の振動数比は2:3ですので、弦の長さも(同一材質、同一張力で弦を張ると仮定した場合)2:3の比に なるはずです)。ところが、現実のヴィオラは、ヴァイオリンの1.1~1.2倍の大きさです。

すなわち、現実のヴィオラは、理想サイズよりも「小さすぎる」。ヴィオラは、ヴァイオリンと同じ構えかた、同じ演奏法を実現するために、樂器の大きさが小さめに作られています。

そして、音域に対して小さめに作られた樂器から発生する音は、倍音を多く含む、堅い、鋭い音になるのです。(樂器の寸法が音色に影響している例としては、「現代トランペット」と、その2倍の管の長さの「バロックトランペット」 の比較を挙げることが出来ます。現代トランペットの高音域は鋭い音を出しますが、バロックトランペットの高音域はどちらかというと澄んだ柔らかい音(=倍音成分が少ない音)を出します)
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※脚注2:倍音成分の大きさが音色にどのような影響を及ぼすかを実験するために、同じ高さで周波数スペクトルが異なる2つの音を作ってみました。以下の2つの音(a),(b)を聞き比べてみてください。両方ともa0(440Hz)の音が0.7秒間鳴ります。

(a) [Example (a)(Ex_a.gif, 2.29KB)]音はここからダウンロードしてください。(Ex_a.wav, 29.3KB)
(b) [Example (b)(Ex_b.gif, 2.29KB)]音はここからダウンロードしてください。(Ex_b.wav, 29.3KB)

倍音成分の多い(b)のほうが幾分堅い音に聞こえることが確認できると思います。
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※脚注3:「減衰振動」(damping oscillation)の振動変位x(t)は、以下のような式で表現できるでしょう。

x(t) = e-αt•ξ(t)

eは自然対数の底であり、因子e-αtは時間tに対して減衰することを示します。減衰のスピードは定数αで決まります。このαを時定数(time constant)と呼びます。
ξ(t)は、フーリエ級数で表現できる関数で、周期振動する因子です。(Tを周期として、ξ(T + t) = ξ(t) と書くことができます。) ちなみに、減衰振動の話題は、電気回路や制御工学などで必須の話題で…等という話を聞いてハハンと思われるかたはこの脚注を読むまで無かったはずですね(爆)
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※脚注4:ドビュッシーのこの曲にはもう1つ仕掛けがあります。第1小節目で最初に鳴る低いG0音に注目し、その倍音を書いたのが以下の楽譜です。
[Overtones of "G1" (G1_overtone.gif,1.42KB)]
ドビュッシーの曲の第1小節目を構成する音が、この倍音列によく似ていることに注意してください。第1小節目全体が「低いG1音の倍音」として機能しているのです。第1小節目の二番目以降の音は、最初に鳴ったG1音の残響のような効果をもたらし「聖堂」「寺」のイメージを強化するのに大きな役割を果たしています。
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(2006 May 30)

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